消えないゲームセンター

地元駅前イタリアンカフェジュニアの二階は、
少し前まで「駅前センター」という名前のゲーセンでした。
その店長さんは面倒見がよく、僕がこちらに引越してきてからというもの、
中学1年の頃からずっとかわいがってもらっていました。





中学から高校、大学と大きくなるうち、当然趣味も二転三転しますから
数年のブランクがあった時期もあります。それでも、
僕が店に入ると店長さんは「しばらく来なかったじゃない、ひさしぶり」と
声をかけてくれ、またこっそりクレジットを入れてくれたものです。





僕がゲーセンが大好きなのもそんな店長のおかげでした。





そんな駅前センターも不況のあおりを受け、一昨年に閉店しました。
その瞬間に立ち会えなかったため、店長に挨拶できなくて悲しい思いをしたことを覚えています。





新しいゲームもあまり入れず、往年の名作で楽しませてくれる
僕としては最高の場だったゲーセンが消えてしまったことは残念でしたが、
それも時代の流れであり、僕は僕できっとこれはきっかけなんだなあと思っていました。







先日、結婚後新居のための手続きをしに新居近くの不動産屋にいった帰りのことです。
レンタルショップの二階に「ゲームパーク」というゲームセンターを見つけました。
少し古ぼけた雰囲気のゲーセンで、今どきのネット対応格闘ゲームは鉄拳だけ。
あとはカプコン系の名作や昔のシューティングなど、50円でいくらでも遊べる僕好みのゲーセンでした。


懐かしいなあ、とギルティギアに50円玉を入れたときのことです。





「おう、ひさしぶりじゃない。どうしたの」





突然肩をたたかれ、びっくりして振り向くと、
そこには白髪としわの増えた店長がにっこりして立っていました。
もう驚いておどろいて、僕は言葉もとっさに出ない状態。



「似てるなーと思ったんだよ。どうしたの今日は」



キャラクター選択するのも忘れ、僕はどもり気味で声をふりしぼり


「ひさしぶりに、寄ってみました」














なんかよくわからんけど嬉しくてうれしくて。
15年前に初めていったあのときの楽しさがフラッシュバックしたような気がしました。


1ゲームだけ終えると、店長が在庫のコーヒーを
勝手に一本ごちそうしてくれて、いろいろ話をしました。
転職したこと、結婚が決まって近くに引越すこと、最近のゲーセン事情、
店長のその後、これからゲームはどうなっていくのか……
社会人になってからは駅前センターに行ったのも片手の指で数えられるくらいだったはずなのに、
しかも閉店から1年以上経ってるのに、覚えていてくれたことがうれしくて仕方ありませんでした。






ケータイ番号を交換して、また近くに来るから今後ともよろしく、と挨拶。
これからもここで50円で楽しく格ゲーがやれるんだ、と良い気分になりました。







僕は名前を伝えたけれど(今まで名乗ってなかった)、
店長は「ん、『てんちょう』で登録しといてよ」。










結局名前わからないんだよなあ。
でもいいか、店長だもんな。