みなさん、さようなら。

老い先短い老人の最後の望みは、おもしろおかしく楽しく看取られて死ぬことだった。



別にぼろぼろ泣く話ではないです。
自分の病状を認識しつつも窮屈な病院とおさらばしたがる父と、
母に頼まれ最後の父の世話をすることになった青年実業家の息子が主人公。


父の望みは、「楽しく死ねるならそれがいい。世界中に散らばった友人たちを集めてくれ」。



そんなわけで集まった友人たちは、ひとくせもふたくせもある変人ばかり。
だけど彼、彼女らはそれぞれがとても温かくて、そして本当に心配してくれて、友の伏せった姿を強く励ましに来てくれました。

病室も豪華に改造し、こうして愉快で楽しい最後の生活が始まったのです。




この物語は、もちろん父とその友人たちの友情も大事ではあるのですが、
父と息子の友情こそが描かれていると思いました。
最初はこんな親父の世話なんて、と思っていた息子。
父が楽しく暮らすために金に糸目をつけず、あらゆる手段を用意してあげるのは、ただ単に義理からではないでしょう。


「父」と「息子」は、「親友」になれる。
男同士の親子って、やっぱりなんか距離があると思うんですよね。ただべたべたするのはなんか違うし、気持ち悪い。
だけど、離れてたってどっかで繋がってるのが父と息子だと思います。
や、別に母とか娘がそうじゃないって言ってるわけじゃないですよ。
ただ、大人になった息子は、父にとって「一人の人間」として接せられる。よく言いますよね、「父に酒を勧められたら一人前」って。
くっつくわけじゃないけど、「男と男の一定の距離」がありつつ互いを認めて尊重する。
それって当然で大事なことですよね。だけど今は父が息子を怖がったり、逆もあったりで話にならない。
父は息子を認め、息子は父を人生の先輩という意味で見ていけばきっとこんなステキな関係になれるんだと思います。
ヘタに「親」とか「子供」って枠にとらわれてちゃもったいない。




父は、友人たち一人一人に別れを告げ、そして最後の友人、息子とがっちり抱き合い、そして静かに旅立ちました。




本当に、本当に満足そうに目を閉じた彼こそが「しあわせ」だったんでしょう。

これをそのまま真似することはないけど、
死ぬときはキレイさっぱり思い残すことなく死にたいなぁ。



正直、うらやましい。