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できるうちにできることを。
祖母の家に行ってきました。といっても、老人ホームなので施設なんですけどね。
祖母の家自体は9月15日に売りに出され、今頃解体中でしょうか。ともあれ、彼女はこの部屋に一人で住んでいるのです。
今日は敬老の日なので、遊びにいってみました。
軽くお茶菓子を買って部屋にいき、ぴんぽーんと鳴らして雑談するだけなんですが、
夫を亡くした祖母には嬉しいようで、僕はたまにこうしてここに訪れているのです。
「彼はなかなか来ないわねえ」
彼こと弟はこういうときはいつも来ないものです。まぁ、そもそもこの年代でわざわざ祖父母の家に遊びにいく習慣はないものですが。
今日は実は一緒にきていたのですが、道中自転車がパンクしてしまい、やむなくリタイアしてしまったのです。
「前親戚で集まったときもね、あの子とは話しなかったでしょう」
子供組と親組で別れますから、若い彼とはあまり話す機会がないのも無理ありません。
そして彼は大学での成績なども評判が悪いので、色々と心配される立場にいるのです。
このままでは留年ではないか、もうちょっと家事やってくれないものか、などなど。
「君はいつも来てくれるけどね、あの子と話せるのは、いつのことやら」
嘆息する祖母。
そのときです。
RRRRR……RRRRR……
「はい、――です。……ああ、―ちゃん? うん、お兄ちゃん今きてるよ。なに? ああ、元気ですよ」
家族でも、親戚でも。
やはり言葉でしか伝わらないことはたくさんあるはずです。
その言葉を伝えないで終わることは悲しいことです。
たまには、こうやって話をする日があってもいいんじゃないでしょうか。
ねえ、若者のみなさん。
ほらお婆ちゃん、ハンカチハンカチ。