ホイコーロー




ウチの母は雑貨屋を経営し始めてまして、現在の我が家の最大の収入はそれに依存しているのが現状です。
小さい有限会社を運営していることになるので、まずはなにより信用第一。
そう、小さな雑貨屋に簡単に休むことは許されないのです。
とはいえ、店員が母一人では当然無理も出てくるというものですよね。
そこで、僕と弟の二人は25日に店を空ける母に代わり、店番をすることにしました。



商品に関しては値付けなどを手伝っていただけに多少は知識あるとはいえ、
さすがにいきなり店を切り盛りするのには若干の不安が残ります。
せっかくなので、店に直接出向き、オーナーから研修を受けることにしました。


阿佐ヶ谷駅から徒歩5分。
栄えていないほうの閑静な商店街の奥の奥にひっそりと佇む小さな雑貨屋、「MINT」。
女性をターゲットにした食器やアロマ、テーブルグッズなどを専門に扱っているこの店は、
ユーザーならではの独創的なアイデアで少しずつ、ですがしっかりと顧客を確立してきております。
僕自身も雑貨は好きなので、見ていて飽きません。
ヒルさんの食器セットだとか、目の形をした虫眼鏡だとか、豚さんのチラシ立てとか。


もともと脳みそが女性よりな部分があるのです。
たぶんやろうと思えばオネエ言葉も抵抗なく使えると思いますが、メリットが限りなく少ない上にリスクの大きさといったらかなりのものなので、「僕、オネエキャラに」計画は実行前に破綻しました。安心しています。



さて、ある程度まで仕事も覚えたところでレジ打ちの練習。
接客ロールプレイングとして、持ってきた商品を打ち込んで支払いを済ます作業をやってみます。


「525円、テーブル雑貨」
「126円、アロマ2点」
「2900円、ランチョンマット」


カチ。カチカチ。


「じゃあ、ついでに包んでみて」


カチ。カチカチ。


「ちょちょちょちょっと。包んでって」


カチ。カチカチ。


「レジはもういいから! 包みなさいって!」


カチ。カチカチ。


「なにその『うるせぇレジ打ちが楽しいんだもっとやらせろ』って目は! 525円を13回も打ち込んでんじゃないよ!」


カチ。カチカチ。


「勝手に領収証を出すな!」


カチ。カチカチ。


「『wwwwwwwwwwwwっうぇwwっうぇ』とか出ないから! 探すな!」









とても店は任せられないそうです。