タイタンズを忘れない

タイタンズを忘れない 特別版 [DVD]

タイタンズを忘れない 特別版 [DVD]

人種差別がまだ根強かった当時のアメリカにおいて、
1971年ヴァージニア州にて初めて黒人と白人の統合が行われた高校での話。実話。



当時の差別主義者たちの思想や行動を描写しているものの、
話のメインはその高校に帰属するアメリカンフットボールチームの監督とその生徒たちの戦いに置かれている。
肌の色によるチームの分裂や個人間のいさかいなどが絶えず描かれているが
いざ実際に対峙している問題はいよいよ結束したチームに対するふたりのコーチのスタンス。
自分のチームに対する結果を求められるのは当然、
肌の違うもう一人のコーチに対するライバル心とチームメイトに対する本気の愛情。
仕事である以上彼らの妥協点はそれぞれにあるだろうし、一元的見方では到底理解しがたいだろう。



それにしても、相手という人間を理解していく過程で
カテゴリーによる判断と個体としての判断は混同しがちであるとこのとき感じた。
つまり相手を社会的立場なり色の違いなり年齢なり性別なりでファーストインプレッションを決めた上で能力を把握していくのと、最初から趣味なり家庭なりの個人としての状況を把握していくのでは同じ到達点にたどり着くまでの距離に違いがありすぎる。
おそらくこの場合アメフトという土俵の中での話であるため、その結果にたどり着くためのプロセスとしてブーン監督は「肌の色の違う相手と一日一回話をしろ」と言ったのだけれど、これがアメフト部内、もしくは高校内というセグメントを脱した話だった場合はそう簡単にできた話ではないのだろう。
今のアメリカであればむしろ個々の能力こそが最も評価されるシステムになっているため上記のような個体能力が比較的透明化しやすいと思うけれど、35年前の当時であればどうしても「相手は黒人、相手は白人」というワンクッションを置いてからの評価になるため非常に「相手個人」を見ることが為されなかったはず。恐らくは周りに猛反対された恋愛なんかも数多くあったのではないだろうか。
さておき、この「統合」という出来事を制度に留まらず実績値まで導いた実例として、ふたりの監督の物語は素晴らしいと思う。
これが実話で本当に良かった、と心から思う。



小難しい話は抜きにして、
人種関係なく、汗と埃にまみれて仲間とともに走り抜け、
目標を見据えて立ち向かっていく彼らに共感し感動する場面が数多くある。
僕は滅多に映画で泣かないのだけれど、この映画に関しては素直に涙を流した。



近ごろ邦画でも泣かせますよ系の青春ものが多々あるけれど、
そういうのが好きなひとにこそオススメする映画。
本当の青春映画というものを、ぜひ観てほしい。



人生に一度、必ず観てほしい名画。