ライド・オン・救急車

風邪でぶっ倒れて昨日会社を休んだ僕が
今朝6時にたたき起こされて最初に見たものは
「だれかー…」と漏らしながら廊下に転がっている弟だった。




なんだこりゃあ。





曰く、急に腹が痛くなったので這いつくばってPCの電源を入れ、ネットで「脇腹 痛い 原因」とほぼカタコトの会話みたいになってるクエリを入力し自分の症状と照らし合わせたところ、割とただ事ではないと思ったとのことだった。





わりかし余裕あんじゃん。




と思ったら今度はうがーだのうぐぐーだの声を出してのたうち廻るので
こりゃあホントにただ事じゃないな、と意を決し119に電話をする僕。


ものの5分で救急車は到着し、カエルみたいな顔した救急士は僕にあれこれ聞いてくる。
ええどうやら5時半くらいからこんな感じみたいなんです原因はわからんのですけどとにかく苦しがっているのですよなんとかしてください。
カエルみたいな救急士はなるほどグェップと唸り、
文字通り七転八倒している弟を運び出すと救急車に乗っけた。
同乗者は? あ僕乗ります、と手をあげ救急車に乗り込む。
そういや8年前自分が運ばれて以来久々の救急車だなあ、あ、どうでもいいか。
がんばれ弟、もうすぐ着くからな、もうすぐだ、だいじょぶだ、と元気づけていたら



なんか本当にじわじわ元気になってきやがった。



アホらしいことに病院に到着したころにはケロっとしてやがって、
カエルみたいな救急士はわははケロっとしてますな、などとほざき
お前のほうが十倍ケロっとしてんじゃねえかと言いたいのをこらえ
ケロっとしたこの弟を診察に放り込む。



2時間後、パジャマのまま放り出された弟を従えた僕は
元気になったこの男に駅前の福しんの定食をおごるハメになり、
微妙な時間なので会社を休むこともできず、
結局のところ金を取られた上に早起きさせられるという
なんだかよくわからないペナルティを課せられたので憤慨し
いったいなんだなんだったんだ何事もなくて良かったなぁ、と心の底から安堵したのだった。